読書感想文:蟹工船

こういう、既に文学としての地位を確立している作品を読んだときはレビューとは言わなさそうだよね。というわけで、タイトルは敢えて読書感想文にしてみた。

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)
小林 多喜二
新潮社
売り上げランキング: 4147
と言ったところで、特に大層な感想文が書けるわけではないが、ものすごくどうしようもない奈落に落ちて行きたい人にオススメな作品。もっと学生闘争とかが盛んな時代では、こういうプロレタリア文学を読んで「なにくそ!革命だ!」などと意気込んだのだろうが、今はそういう時代でもなく、組合がんじがらめののほほん労働者か、諦めムードの非搾取労働者か、どっちかしかいないのだろうから(大雑把すぎる気はする)。で、どちらかというと後者の人が読んで、より鬱な気分に浸るのが良いのではないだろうか。
物語はどういうものかというと、北海道や東北の田舎から寄せ集められた労働者たちが蟹工船に乗せられ、「糞壺」と呼ばれるタコ部屋暮らしでオホーツク海に蟹捕りに行かされ、厳しい環境に耐え切れず反抗を企てるもあっさり鎮圧、という話。もちろんこのあらすじは意図的にいろいろ省きまくってるし、実際の内容とは結末が少し異なるが、だいたいこんなもんだ。オチよりも、分かりきった結末に向かっていくまでの労働者たちの感情の機微を楽しむ作品と言えよう。
偉そうなことを書いているが、作品自体は短くてサクっと読めるので、電車の中ででも読んでみてはいかが?